籠の定義、仕様および使用法

 

 

メランコルプ Melankorb、すなわち「メランコリーの籠」とは、メランコリカーにおける世界観の構造図式であり、その世界観をもってメランコリカーが世界を観想するさいに作動するオペレーション・システムおよびその運動性のモデルである。また翻ってメランコリーとは、この籠の持つ運動性の総体のことである。そして、メランコリカーとはこの籠が実装されている者のことである。

この籠は二つの要素から構成されている。すなわち、(1) 無数のメビウス・リング(輪)における回転、および (2) それらリング相互のリンク(接続)である。

(1) 個々のメビウスリングの直径はその回転速度のもたらす遠心力に応じて無限に伸縮可能であり、ゼロ度に収縮することもできるし、無限宇宙大に拡張もできる。リングの直径の伸縮に伴って籠全体のサイズも伸縮する。各リングの回転速度は必ずしも全て一様ではない。
(2) リング間のリンクはさまざまな契機によって生じ、それが生じる場所は常に一定とは限らない。総じて、リンクポイントが多くかつリンク頻度が高いほど、関連リングの回転速度が増し、したがって籠のサイズが拡張する傾向にある。逆に各リングの回転速度が甚だしく落ちて籠のサイズが極度に縮小すると、籠はその動作性を失い、リンクの発生も困難になる場合が多い。

メランコロジストは、自らの籠を一種の照明機能を備えた反射鏡ないし聴診器として用い、観察対象に実装されている OS の仕様、ヴァージョン、スペック、互換性、動作性の良不良などをこれによって測り、診断することができる。診断の結果がある一定の条件を満たした場合、次にこの籠を一種の捕虫網として用い、自身のリングと対象のリングのそれぞれどれかをリンクさせることによって、対象をとりこみ、採取することができる。相互にリンク可能なリングの数が多いほど、採取は容易に行うことができる。
   対象が一定以上のバグを含んでいると、多くの場合採取不可能である。他方メランコロジストを志す者は、自らの籠に不具合が生じたり、機能不全に陥るほどにサイズが縮小することを防ぐために、不断のメンテナンスを心がけねばならない。



「世界は丸い球体性をもつ」    モーリス・ブランショ

「我はなんぴとのものにもあらず、かつ、万人のものなり、
汝はここに入るときすでにここにあり、ここを出づる時も、なお、ここにあらん」   ボルヘス/ディドロ



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